A6 まず、会社と役員の間は民法上の委任(643条~656条)の関係にあります(会社法330条)。よって、民法に委任の解除の規定があるのと同様、会社法においても会社はいつでも株主総会の決議をもって役員を解任することができます(会社法339条1項)。役員を解任する機関を株主総会決議としたのは、選任する機関にあわせたものであり、よって、取締役会で選任された代表取締役に 対して代表取締役たる地位のみを解任するのはその選任機関と同様、取締役会の決議によります(会社法362条2項3号)。取締役を解任する際の株主総会決議要件として、旧商法時代は「特別決議」(総議決権の過半数の株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成)としていたのを、会社法では「普通決議」(総議決権の過半数の株主が出席し、出席株主の過半数の賛成」(会社法309条2項7号)と要件が緩和されました。従前より解任しやすくなったわけです。
役員の解任理由については特に問われていません。単に気に入らないだけでも解任は可能です。しかし、解任される側としても一生懸命会社のために働いていたのを、いきなり解任されるのでは、 たまったものではありません。そこで会社法では、解任された役員は、解任理由に正当な事由がある場合を除き、解任によって生じた損害の賠償を会社に請求することができます(会社法339条2項)。いわゆる解任による損害賠償請求です。同様の規定が民法にも存在(民法651条2項)するので、決して会社法で特別に規定したものではありません。
では、その損害額なのですが、一般的には「本来任期が満了するまでの間に生じたであろう役員報酬相当額」と考えられています。 例えば、任期が10年ある役員のうち、ある者を5年で解任した場合、解任による損害額は残り5年分の役員報酬相当額となるわけです。(なお、損害額については、事案によってまちまちなので、上記が一律ではないことを付しておきます。)あと、役員が退任したときは必ず登記手続を必要としますが、会社の登記簿には「退任理由」が記載され、当然に役員を解任した場合も「平成○年○月○日解任」と記載されます。一般的に「解任」は、対外的にあまり良いイメージを持たれず、「何か問題があったのでは」「内部紛争があったのでは」と思われがちです。解任対象となる役員の任期満了が近く、余程のことがない場合は、その役員の任期満了まで待ってみるのも一つの方法かもしれません(損害賠償の問題も無いし)。